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「陰影の瞳」 北原白秋
夕(ゆふべ)となればかの思(おもひ)曇硝子をぬけいでて、
廃れし園のなほ甘きときめきの香に顫へつつ、
はや饐え萎ゆる芙蓉花の腐れの紅きものかげと、
縺(もつ)れてやまぬ秦皮(とねりこ)の陰影にこそひそみしか。
如何に呼べども静まらぬ瞳に絶えず涙して、
帰るともせず、密やかに、はた、果しなく見入りぬる。
そこともわかぬ森かげの鬱憂(メランコリア)の薄闇(うすやみ)に、
ほのかにのこる噴水(ふきあげ)の青きひとすぢ……